研究実績

研究業績一覧(近5~6年程度)

【共通】

    • 『『詩経』の形成-儀礼化から世俗化へ-』(陳致著、湯浅邦弘監訳、中村未来・草野友子他共訳、東方書店、2023年)
    • 『よくわかる中国思想』(湯浅邦弘編著、中村未来・草野友子・六車楓他共著、ミネルヴァ書房、2022年)
      →中国思想を様々な角度から学べる入門書。見開き二ページで一項目を解説する「やわらかアカデミズム・〈わかる〉シリーズ」の一つ。重要な思想家、概念、文献などをおさえつつ、新たな視点として、中国思想が反映されている史蹟や芸術作品、中国思想を理解する上で重要な大事件・論争、さらに中国思想と相互に影響を与えあったインドや日本の思想にも触れる。中国思想の大きな輪郭を捉えつつ、トピックごとに学びを深めることができる。
    • 『教養としての中国古典』(湯浅邦弘編著、中村未来・草野友子他共著、ミネルヴァ書房、2018年)
      →代表的な中国の古典を最新の研究成果を踏まえて概説した書。写本・版本の図版を大きく掲載するとともに、各章に「名文読解」の節を設け、原典にも親しみながら学べるよう工夫されている。「中国の古典五〇選」では多種多様な中国古典をコンパクトに紹介する。
    • 『清華簡研究』(湯浅邦弘編著、中村未来・草野友子他共著、汲古書院、2017年)
      →清華簡に関する日本初の研究書。『清華大学蔵戦国竹簡』第6分冊までに公開された新出土文献を対象とする共同研究の成果。全3部、計17章からなる。第一部では清華簡発見から第6分冊までの状況を概説し、文字・書法の観点から字迹分析を行う。第二部では9本の論文により、『殷高宗問於三壽』『程寤』『尹誥』『耆夜』など具体的な新出土文献を取り上げて、その思想史的特質を明らかにする。第三部は竹簡の古文字、竹簡背面の劃線・劃痕などの諸情報に注目する。
    • 『テーマで読み解く中国の文化』(湯浅邦弘編著、中村未来・草野友子他共著、ミネルヴァ書房、2016年)
      →「世界遺産」「漢字」「書籍」「学問」「故事と歴史」「文学と絵画」など、中国の文化に関する14のテーマを取り上げ、その基本的特質を解説する概説書。コラムでは、10の文化事象について紹介する。

中村未来

(主要著書)

(主要論文)

    • 「清華簡『心是謂中』の文献的特質について」(『中国研究集刊』第69号、207-217頁、2023年3月)
      →本稿では、2018年11月に刊行された『清華大学蔵戦国竹簡(八)』(李学勤主編、中西書局)に所収の文献『心是謂中』を取りあげて釈読を行い、そこに見える「心身論」「天命思想」について考察を加えた。清華簡『心是謂中』には、心身関係と君臣関係とが関連付けて説かれているが、そこには君権強化の統治論を主張することに主眼があったというよりも、むしろ心身の道徳性や主体性を説くことに重点が置かれていたのではないかと指摘した。また『心是謂中』には、自身の力の及ばぬ運命性を認めながらも、なお人為的努力や心の能動性・主体性を強調する思考が見え、これは儒家の系統に連なるものであろうと述べた。さらに本篇には、『尚書』洪範篇や呂刑篇との関連性も窺われるが、楚地におけるこれら経書の流入や受容状況の検討については、今後の課題としたい。
    • 「戦国期における子産像――儒家系文献を中心に」(『中国研究集刊』第63号、88-104頁、2017年6月)
      →本稿では戦国期における子産(鄭の宰相)像、特に儒家系文献に見える子産の「恵人」という評価を中心に検討を試みた。孟子の活動時期と同時期の新出土文献・清華簡『子産』には、儒家が子産に付与した「恵人」の評価のみならず、令・刑を定め、賢臣を推挙して政治を行うなど、『左伝』同様、様々な子産の政治施策が見られる。子産を殊更「恵人」とのみ評価し、そこに「政を為すを知らず」という負のイメージをも附加するのは、孟子以降の儒家に突出した特徴であり、その背景には、孔子から続く法政・刑罰を徳・礼の下位に位置づけようとする儒家の強固な姿勢があったとの展望を得ることができた。なお、《儒藏论坛》2019年01期(四川大学国际儒学研究院・中国)には、本稿の中国語改定版《战国时期的子产形象:以儒家文献为中心》が掲載されている。
    • 「作爲統治手段之「恥」:以《逸周書》三訓爲中心」(《東亞觀念史集刊》第11輯、311-337頁、2016年12月)
      →本稿では、「恥」認識の大本を探るべく、まずは中国春秋戦国期における「恥」の用例を確認し、続いて、これまで成立が曖昧で「恥」に関する研究ではその対象から除外されてきた《逸周書》三訓に見える「恥」の記述を中心に検討を試みた。その結果、「恥」については、《論語》や《孟子》が内省や自己修養を促すものとして重視していたのに対し、《管子》では「恥」が「礼」や「義」と並列され、国家統治の要とされていたことが明らかとなった。また、《逸周書》三訓においても、恥は習慣化することにより、人々の悪行を抑え、善行を進める指針として、天道の「命」に対するものと説かれていたことが判明した。《逸周書》三訓が、天人相関の思想を説き、恥を禍・福・賞・罰と同様に民衆統治の要として重要視する点は、《管子》に類似するものであると考えられ、恐らく、《逸周書》三訓と《管子》の根幹を為す思想とは、かなり近接した時代に形成された可能性が高いと結論づけた。
    • 「清華簡『命訓』釈読」(『中国研究集刊』第62号、107-126頁、2016年6月)
      →本稿では、2015年4月に刊行された『清華大学蔵戦国竹簡(五)』(李学勤主編、中西書局)に所収の文献『命訓』を取りあげて検討し、その訳注を示した。清華簡『命訓』は、現行本『逸周書』命訓篇とほぼ同内容の文献であり、全篇をとおして、民衆統治のための方策が述べられている。従来、現行本には不明な点が多くあったが、清華簡と対照することにより、そのいくつかの疑問が解消された。本稿では、特に現行本で文意不明となっていた「無」字や「醜」字について、若干の考察を行っている。

 

草野友子

(主要著書)

    • 『中国新出土文献の思想史的研究―故事・教訓書を中心として―』(汲古書院、2022年1月)
      →1990年代以降に発見された中国新出土文献のうち「故事」「教訓書」類の古佚書を取り上げ、その成立と展開、思想史的意義を解明することを目的として執筆したもの。主な研究対象は、上博楚簡と北大秦簡・漢簡である。序論、第一部「楚国故事の研究」、第二部「故事類文献の研究」、第三部「新出土文献から見る教訓書」、結語で構成し、冒頭には専門用語一覧・凡例、末尾には初出一覧・中文目次・中文摘要・索引を附す。これまでの科研の研究成果の集大成であり、かつ「2021年度立命館大学学術図書出版推進プログラム」に採択された刊行物。
    • 『中国思想基本用語集』(湯浅邦弘編著、共著者、ミネルヴァ書房、2020年)
    • 『ビギナーズクラシックス中国の古典 墨子』(角川ソフィア文庫、2018年)
      →『墨子』の抄訳書。一般の読者に理解できるように配慮し、『墨子』の篇順に訳するのではなく、八つのテーマに分けて再構成した。また、「『墨子』に関わる新資料」の項目を設け、新出土文献の発見が中国古代思想史研究に与えた影響や、上博楚簡『鬼神之明』などの『墨子』に関わる新出の竹簡資料について解説を加えた。
    • 『竹簡学入門―楚簡冊を中心として―』(陳偉著、湯浅邦弘監訳、草野友子・曹方向訳、東方書店、2016年)
      →武漢大学簡帛研究中心の陳偉教授による戦国楚簡の概説書『楚簡冊概論』(湖北教育出版社、2012年)の抄訳。本書は、「楚簡の基礎知識」「発見と研究」「整理と解読」「出土文献の研究」の四章構成で、「竹簡」の基礎知識や、どのように発掘・整理され、解読が進んできたのかを実例を挙げながら解説しており、初学者のみならず研究者にも有益な情報を提供している。
    • 《簡帛文獻與古代史 : 第二届出土文獻青年學者國際論壇論文集》(共著、中西書局、2015年)

(主要論文・訳注)

    • 「北京大學藏秦簡牘『敎女』譯注」(『學林』第70号、66-94頁、2020年10月)
      →2010年に北京大学が入手した秦簡の中には、女性向けの教訓書が含まれていた。『教女』と名付けられたその書物には、善良な女子が夫の家で遵守すべき規則や、善良ではない女子の劣悪な行為、善良な女子が避けるべきことなどが具体的に記されており、漢代以前の女訓書の実態が窺える重要な資料である。『教女』の竹簡の写真図版はまだ全て公開されていないものの、すでに整理者による釈文と先行研究が発表されている。そこで、本篇全体の釈読を提示し、その全容を明らかにした。
    • 「清華簡『封許之命』の基礎的検討」(『待兼山論叢(哲学篇)』第53号、1-15頁、2019年12月)
      →清華簡『封許之命』は周初の許国封建に関する文献であり、伝世文献には見られない内容である。本篇の記述形式は西周・春秋時代の青銅器の銘文に見られる冊命と同様であり、周王から呂丁に授けられた車馬や器物などが詳細に記されている。そこで、本篇全体の釈読を提示した上で、その内容を明らかにした。
    • 「北大漢簡『周馴』の思想史的研究―『詩』の引用を中心に―」(『漢字学研究』第6号、33-46頁、2018年10月) 
      →2009年に北京大学が入手した漢簡には、戦国時代の周の昭文公の共太子に対する教訓書『周馴』が含まれており、その内容は伝世文献には見られないものである。整理者はこの文献について、『漢書』芸文志の「道家類」に見える「『周訓』十四章」であり、黄老学派の文献であると見なしているが、先行研究において異なる見解も提示されている。そこで本篇の思想的傾向を明らかにするために、『周馴』に引用されている伝世文献、特に『詩』の解釈を中心に取り上げて検討した。その結果、本篇の形式は戦国時代後期から漢代の儒家が『詩経』を引用して説く際にしばしば見られるものであり、道家よりも儒家の思想に近い文献であることを明らかにした。なお、本稿の中国語改訂版「北大漢簡《周馴》所引《詩》的思想史研究」が武漢大学簡帛研究中心主編『簡帛』第18輯に掲載された(上海古籍出版社、2019年5月、189-198頁)。
    • 「日本學者對中國古代思想之重要概念的研究特色──以心、神、仁、禮、性命為例(《東亞觀念史集刊》第11輯、385-424頁、2016年12月)
      →日本の中国古代思想史研究において観念史アプローチで貢献した四氏、竹内照夫(仁)、加藤常賢(礼)、森三樹三郎(性命)、栗田直躬(心・神)を取り上げ、その研究の内容や問題等を俯瞰しつつ、その特色を述べたもの。

 

湯浅邦弘

(主要著書)

    • 『世界は縮まれり─西村天囚『欧米遊覧記』を読む─』(KADOKAWA、2022年)
    • 『中国思想基本用語集』(ミネルヴァ書房、2020年)
    • 『竹簡学─中国古代思想の探究─』(大阪大学出版会、2014年)
      →新出土文献研究の成果。上博楚簡、清華簡、岳麓秦簡、銀雀山漢墓竹簡、北京大学漢簡などを対象とし、それぞれの思想史的意義を明らかにする。第一部「儒家思想と古聖王の伝承」「王者の記録と教戒─楚王故事研究─」「新出秦漢・漢簡に見る思想史」の3部、計15章からなる。第1回大阪大学教員出版支援制度に採択された刊行物である。

(主要論文)

    • 「『詩経』形成史における安徽大学蔵戦国竹簡の意義」
      (『中国研究集刊』第67号(電子版)、1-17頁、2021年8月1日)
      →英語版で発表した安大簡『詩経』に関する論考を大幅に加筆修訂し日本語版として発表したもの。日本初の安大簡『詩経』に関する論文。『詩経』が漢代に経書として確立する以前の戦国期テキストについて分析した。異文・異章次が発生する原因を追及し、安大簡『詩経』、漢代の『毛詩』の資料的価値について考察する。
    • 「西村天囚『欧米遊覧記』と御船綱手「欧山米水帖」─明治四十三年「世界一周会」の真実─」
      (『大阪大学文学研究科紀要』第61巻、1-45頁、2021年3月22日)
    • 「小宇宙に込めた天囚の思い─種子島西村家所蔵西村天囚旧蔵印について─」
      (『懐徳堂研究』第12号、3-23頁、2021年2月28日)
    • 「懐徳堂の復興と西村天囚─「世界一周会」の歴史的意義─」
      (『懐徳』第89号、14-37頁、2021年1月31日)
    • On Stanzaic Inversion in the Qin feng 秦風 Ode“Sitie” 駟驖 (Iron-Black Horses) in the AnhuiUniversity Bamboo Manuscript of the Shi jing 詩經(Classic of Odes),bamboo and silk 4
      (『bamboo and silk』Volume 4: Issue 1、149-171頁、2021年1月28日)
      →安大簡『詩経』に関する論文。新出土文献の研究拠点である武漢大学から求められ投稿したもの。同大学の『簡帛』英語版の特集に掲載された。
    • 「孔子と読書─「韋編三絶」の真相─」(2019年度足利学校アカデミー講演)
      (足利学校『研究紀要』第18号、37-69頁、2020年3月31日)
    • 「西洋近代文明と向き合った漢学者─西村天囚の「世界一周会」参加─」
      (『大阪大学文学研究科紀要』第60巻、1-37頁、2020年3月)
    • 「鉄砲伝来紀功碑文の成立」
      (『国語教育論叢』第27号(福田景道先生御退職記念号)、139-156頁、2020年2月29日)
    • 「石濱純太郎・石濱恒夫と懐徳堂」
      (『東西学術研究と文化交渉─石濱純太郎没後50年記念国際シンポジウム論文集─』、285-296頁、2019年11月1日)
    • 「日本的中国学与《四庫全書》」
      (『四庫学』第五輯、首都師範大学中国四庫学研究中心、陳暁華主編、48-54頁、社会科学文献出版社、2019年5月)
    • 「銀雀山漢墓竹簡《論政論兵之類》考釈」
      (『簡帛思想文献研究 個案与方法』、劉笑敢、鄭吉雄、梁涛編著、219-235頁、東方出版社(北京)、2019年3月)
    • 「懐徳堂と近現代日本の社会」
      (合山林太郎ほか編『文化装置としての日本漢文学』(アジア遊学229)、171-180頁、勉誠出版、2019年1月15日)
    • 「懐徳堂文庫所蔵「版木」のデジタルアーカイブ」
      (竹田健二編『懐徳堂研究第二集』、汲古書院、439-448頁、2018年11月21日)
    • 「時令説の展開─北京大学竹簡『陰陽家言』、銀雀山漢墓竹簡「陰陽時令・占候之類」を中心として─」
      (立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所『漢字学研究』第6号、1-20頁、2018年10月30日)